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1.トリンテリックスの分類
トリンテリックス(成分名:ボルチオキセチン)は従来のS S R I(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の作用だけではなく、様々なセロトニン受容体の調節に働く抗うつ剤になります。そのため、セロトニン再取り込み阻害・セロトニン受容体調節薬に分類されています。
2. トリンテリックスの効果(適応症)
トリンテリックスは、うつ病・うつ状態に保険適応されているお薬です。
3.トリンテリックスの作用メカニズム
トリンテリックスは、セロトニン再取り込み阻害作用によりセロトニンという脳内の神経伝達物質を増やします。
ここまでは従来のS S R Iと同じ働きですが、それに加えてセロトニン受容体調節作用を持っており、この働きにより、セロトニンのみではなく、ノルアドレナリン・ドパミン・アセチルコリン・ヒスタミンの遊離を促進します。
セロトニン:感情や気分のコントロール
ノルアドレナリン:ストレス刺激
ドパミン:意欲
アセチルコリン:思考
ヒスタミン:ホルモン分泌や睡眠などに関与
上記の働きにより、抑うつ症状や不安症状に効果を発揮することが分かっています。
4.トリンテリックスの特徴
2019年11月に発売された抗うつ薬の中では最も新しいお薬です。
10mg錠と20mg錠の2種類があり、まだジェネリック医薬品は発売されていません。
トリンテリックスは効果が感じられるまでに数週間かかることが一般的で、飲み忘れず続ける必要があります。トリンテリックスは1日1回の服用で良いため、飲み忘れる心配が少ないメリットがあります。また、体から抜けるスピードがゆっくりであるため、お薬を飲み始めたり、やめたりするときの副作用が出にくいと言われています。
5.トリンテリックスの副作用
従来のS S R Iより少ないという報告もありますが、飲み始めに下痢や吐き気という消化器症状を感じやすいことが挙げられます。これはセロトニンが脳だけではなく、胃腸にも働きを持っているからで、胃を荒らしてしまう強い薬というわけではありません。心配な方は、服用初期に胃薬を一緒に服用することで副作用を感じにくくするという方法もあります。通常は数日から1週間程度で消失する副作用です。
また、従来のS S R Iで報告のある体重・脈拍数・血圧・心電図・性機能への影響が少ないことが報告されています。
6.トリンテリックスのやめ方
トリンテリックスは効果が十分に発揮され、状態がよくなったのを確認してからゆっくりと減らしていくお薬です。
急にやめたり、飲んだり飲まなかったりすると「離脱症状」と言われる耳鳴り・痺れ感・吐き気・頭痛・イライラ・不安感などの症状が出たりします。
医師と相談しながら、焦らず徐々に調節することで、上記のリスクは最小限に抑えられます。
水戸メンタルクリニック 院長 医学博士/精神保健指定医 高尾哲也
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